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「むじゃきな彼女に、加減しないキスを」 

 

 ククリア王国夏。
 日中の日差しは暑い。
 その熱を避けるように、一組の男女が精霊の木へやってきた。
 王家の次男フリオニール・ギローと、その現在の恋人アビゲイル・ナインだ。

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 行先をここに決めたのは、アビゲイル。彼女は弾んだ足取りで、広場の中央奥、ここに住まう精霊フェイ・シーが守っているという大樹に歩を進めていく。
「うふふ。なんだか懐かしい気がして面白いね。ここで遊んでたの、ほんの少し前なのに」
「――そうだな」
「まだ大人になったばかりって感じなのに、すごく昔みたいな気もする」
「――ああ」
「ここでみんなで遊んだのって、そんな昔じゃないのにね」
「――」
 反応が鈍いフリオニールに、アビゲイルは肩をすくめた。
「――なんだか、いつもより無口だね」
「……そんなことも、ないだろ。いつもと変わらない」
「うん。フリオニール様は、もともとそんなにお喋りな方じゃないけど……なんだかちょっと、いつもと違う……かな?」
 伺うような上目遣いと、傾げられた小首。
「何か、あたしに言えないようなこと考えてる?」
 視線を合わせて、逸らせなくて、フリオニールは、深く長く息を吐いた。
 
「まあ、言えないようなことと言えば、そう、かな」
 素直にそう口にした途端、細くて綺麗な眉が下がった。そんな様子に小さく笑って、手を取る。アビゲイルの指は細くて長い。肌もきめ細やかで、触れていて心地いい。
「言えないというか、出来れば言いたくないというか」
「――どうして?」
「――カッコ悪いから」
 短く小声で呟くと、木の実のような形をした瞳が、軽く瞠られた。
「でも――もう今更、カッコつけるのもやめるかな」
「――どうして?」
 アビゲイルの口から出てくるのは疑問ばかり。握った手をゆっくり引いて、抱き寄せる。
「こう言ってはなんだけど、俺は君に対して全然余裕がない」
「――そうなの?」
「我ながら情けなくてどうしようもないとは思うんだが。君といるとき、俺はいつだって必死」
「全然、そんな感じしないけど……」
「そりゃあカッコつけてるからな。そんなこと誰より君に悟られたくない」
 一度視線をはずして、周囲を見回す。
 精霊の木の広場は、まだ子供の姿もなくて、静かだ。
「確かに、ここでは子供の頃一緒に遊んだ。だけど、君と俺は個人的に出かけたことはない」
「そうだったね。仲は良かったと思うんだけど、あたし達」
「ああ。俺にとって君は一番の女友達だった。でも君は、俺以外の同級生とも仲が良かっただろう? ジェローム、アルバーン、テオドラ。同級生全員」
「――そうね。でも――」
「いいんだ。別にそれは。俺だってジュリアは家が近所で仲が良いし。バルバラさんは、まあ従姉だからな。それなりには親しいと思う。だから、別にアビゲイルと他の男連中についてのことは、何も言うつもりはない。でも」
 苦い笑いを、どこか呆然とした顔に近づける。額と額を触れさせる。
「さっきも言ったけど、俺は君に対して本当に余裕がない。不安でしょうがない」
「フリオニール様……」
「ジェロームとアルバーンは俺より優しいし、テオドラは俺より真面目だ。そして、三人の内には生徒時代君と出かけたことがあるヤツもいる。だから」
 右手を頬に添えて、そっと撫でる。アビゲイルは少し瞳を細めた。そのまま手を滑らせて顎で止め、上向かせる。心得たように瞳が閉じられたところで、軽く唇を重ねた。
「――今俺はこうして君の唇に触れることを許されているけれど、いつかそれが出来なくなってしまうんじゃないか。いつか他の誰かが俺のかわりに、触れてしまうんじゃないかと思ったら――」
 自分に自信がない、だから――目の前の、女性を攫われてしまうかもしれないと。
「何しろ、君は綺麗で、むじゃきな笑顔が可愛くて。俺以外のどんな男だって、君に惹かれるだろう。子供の頃仲が良かったなら尚更だ」
 アビゲイルは間違いなく、同級生の男子全員に憎からず思われている。
「――いっぱいいっぱいだ、俺。君のことには」
 本当はこんなことを話すつもりはなかった。知られたくないと思っていた。
 けれど、今いる精霊の木は場所が悪かった。ここは子供の一番の遊び場だが、それ以上に仲のいい同士が二人だけで遊ぶ特別な場所。おそらくアビゲイルは同級生の誰かとここにきて――大人になってもずっと一緒――などといいながら、遊んだことがあるに違いない。
 それを思ったらもう、涼しい顔でいつものように出来る限り紳士的に彼女に接することなんてできそうになかった。その上、あたしに言えないようなこと?――などと言われては、カッコつけるのも限界だった。
「ごめんな。変な話して。カッコ悪いな、俺」
「……そんなこと」
「――まあ、そろそろ帰ろう。もう学校も終わる頃合いだ。子供が増えたら冷やかされる」
「別に、それくらいは」
「俺、今ちょっと物凄くカッコ悪い状態だから。あまり下級生に見られたくないかな」
 情けない顔をしているのが自分でわかる。そんな顔を不特定多数に晒したくはない。ましてや自分よりも年下で、ついこの間まで一緒に勉強をしていた子供たちになど。
 さりげなく手を取って、広場の入り口に出ようとするができない。逆に強く腕を引かれた。
「――? アビゲイル?」
 そのまま強引に茂った木々の更に奥に連れ込まれる。精霊の木の大樹。その陰に。フリオニールは木の幹を背にするように押し付けられる。そして、アビゲイルはそのまましっかりと身を寄せてきた。
「……どうしたんだ」
 普段からどちらかといえば積極的なのはアビゲイルの方だったが、ここまで大胆にされたことはない。密着しすぎて、彼女がいつもつけているラナンの香りだけでなく、彼女本来の体臭まで感じられて落ち着かない気持ちになる。
 どうしたものか――そう思案していると、胸元から声がした。
「ねえ」
「――ん?」
「もう一度……キスして」
「!」
「今度は」

 ――もっと、しっかり長く。

 見上げてくる瞳が少し潤んでいる。フリオニールはそっと唾を呑み込んだ。
「……あのな」
「うん」
「この間まで子供だったとはいっても、俺ももう今は健康的な成人男子なので、そんな風に言われると」
 視線に力を込めて、少し睨むようにする。
「加減できないぞ」
 声を低く落とした警告は、一度だけ。
 アビゲイルは、
「――いいよ」
 挑戦的に笑った。
 両腕をしっかり細い体に回して唇を重ねる。重ねるだけではおさまらない。彼女の内側に触れていく。吐息が混じりあう。互いが一つに溶け合っていくような感覚。
 熱くて――濃い。
 一度も、フリオニールはこんな風にアビゲイルに触れたことがない。キスは何度もしているが、軽く触れる程度にとどめていた。強く深く触れたくなかったわけではない。むしろ、いつだってこうしたいと思っていた。
 けれど、できなかった――失うのが、怖くて。
 一度深く触れてしまったら、もう離したくなくなるのが、わかっていたから。
 しかし今はもう、加減しないと言った通り、貪欲にアビゲイルを求める。もう退かれても逃すつもりはなかったが、彼女の方も積極的に応えてくれた。
 今までの分を取り返すような長い長い時間をかけた口づけは、二人の息が切れそうになった頃合いに終了した。唇が離れても、顔の距離は近い。身体も密着したままだ。
 ほぅ――っとアビゲイルが息を漏らす。
「――ねえ」
「ん?」
「勝手にいっぱいいっぱいになるのは、いいんだけど」
 上目遣いの瞳は、まだ潤んでいる。
「あたし、もう君以外とこんなことする気も、つもりもないから」
「!」
「だから、ずっとこうやってキスして」
「アビゲイル……」
「フリオニール様のキス、優しいけど、物足りなかった。だって遠慮してたでしょ?」
「!」
 見抜かれていたらしい。
 アビゲイルは不満そうに、口を尖らせている。たった今まで触れていたせいで、少し湿り気を帯びた淡いローラの花の色に似た唇が蠱惑的過ぎて――狙ってしているなら性質が悪いな――フリオニールは軽いめまいを覚える。
「これからは遠慮しないでいいからっていうかしないで」
「いや、そう言ってくれるのは嬉しいけど、今みたいなのはちょっと、人前ではできないだろ……」
「そう? わりと普通じゃない?」
「いやいやいや。さすがにあそこまでしてるのはいないだろ。国で一番ベタベタしてるって言われてる俺の親だって往来でそこまでは……」
「じゃあ人目がなかったら、いつもしてくれる?」
「……いや……まあ……いいんだが、色々ちょっと抑えるのが……」
 今も、わりと大変なのだが――誤魔化すように頭を掻くと、アビゲイルは悪戯っぽく笑った。
「――抑えなくてもいいけど?」
 完全に、面白がっている。
 苦笑い。強く抱きしめる。
「……さすがにそれは無邪気が過ぎる……勘弁してくれ」
 再び唇を重ねる。
 いつもよりは大胆に。
 先ほどよりは、少しだけ、加減して。





「子供増えて来たね」
「そうだな。それとなく帰るか」
「うん――って、あ。ジークルーナ様いるよ」
「ホントだ。あーあ。服汚してんなあ。お袋に怒られるぞ……」
 友達と楽しそうに遊ぶ妹は、木によじ登ろうとしたり、草地に転がったりとお転婆そのものだ。そんな無邪気な妹が可愛くて、我知らず、フリオニールの瞳が細くなる。
 アビゲイルはそんな様子に小さく笑った。
「こう言ってはなんなんだけど」
「ああ」
「あたしにとっての一番のライバル、ジュリアでもバルバラでもなくて、ジークルーナ様なんだけど」
「なっ!?」
「だって、フリオニール様。妹に物凄く甘いじゃない」
「やっ、そんなこともないだろ」
「そんなことあるわよ。ジークルーナ様と話してる時の顔、普段と違うし。見かけたら絶対抱っこしてる。ジークルーナ様は、抱き上げられて困った顔してるけど」
「ま、まあ……俺にとってはたった一人の年下の兄妹だし。一番年も近いから……」
 ついつい必要以上に構ってしまうのは否定できない。それでも妹がライバルと言われてしまうと、物凄く困る。ジュリアやバルバラならば多少でも距離をおけばいいだけなのだが。
「ふふふ。まあいいんだけど。あたしは兄さんと年だいぶ離れてるから、あんまり構ってもらったことなくて、羨ましいなって。それに」
 木の実に似た形をした瞳が優しく細まって、アビゲイルは少し恥ずかしそうに笑った。
「“自分の子供も”、あんな風に抱っこして可愛がってくれるかなって思ったら――素敵ね」
「――アビゲイル」
 明らかに言葉に深い意味が込められている。それがわからないほど、フリオニールも鈍感ではない。視線をからめる。互いに互いの気持ちを探るように――伝えるように。
 今はもう、フリオニールの気持ちはしっかりと決まっているし、おそらくアビゲイルもそうだろう。
 見つめあったまましばらくの無言――同時に、破顔する。
「さあ、帰りましょ。子供達、何人かこっち気にしてるし――ジークルーナ様も」

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 言われてみれば、妹は花を摘みながらも、ちらちらとこちらを伺うようにしている。花を摘むのはまるでついでなのだろう。ぶちぶちと適当に手に触れる草やらを無造作にむしっているだけだ。
「あー……後で、きっと、らぶらぶー?――って言われるな」
 少しませた妹は、折に触れアビゲイルとの関係を聞いてくる。それは別に構わないのだが、たまに物凄く鋭いことを言ってくるので、困ることがある。そんなときは、曖昧に言葉を濁しているのだが、妹にはそれが不満のようだ。子供ながらに誤魔化されているのがわかるのだろう。

 だが、もし次に聞かれたなら――

「いいじゃない。本当の事なんだし?」
「――そうだな」
 微笑みを交わして、どちらからともなく手を繋ぐ。
 寄り添うようにして堂々と、子供たちの視線の中、精霊の木を後にした。





SS最初から子供いっぱいだけどまあ、そこは話の都合上ってことで……。
むじゃきな彼女に振り回されて、クールな振りして実はいっぱいいっぱい、みたいな話を書きたかった。書きたかったのだが……自爆した感。
チューしかしてないが、若干ギリギリか……。ククリアの交際って超股がけするわりに清いよね。宿屋とか活用されないのかとか下品なこと考えるあたりが最低。まあ空き家もあるし――とかもっと最低だな。
実際にはそういうことはシズニ教の教えかなんかを忠実に守ってんだろうなあ。生涯一伴侶だし、そういうところ潔くて良いよね。下品なこと考えたヤツがいうのもなんだけど。
まあフリオニールの場合、相手は両親の親友夫婦の一人娘なので、間違ったことしたら、多分命がない。セリーナが王家の剣でゲーナの樹のように斬り倒すに違いない。

しかし、アビゲイルの事はともかく、フリオニール、シスコン。
ジークルーナにメロメロだけど、実はシスティーナお姉ちゃんも大好き。女二人の間に挟まれて、どちらにも頭が上がらない&どちらも大好きみたいなね。
そりゃーアビゲイルもちょっとは妬くよね。血縁って下手すると一番の強敵だからな。

まあなんというか。
兄が思いのほかイケメンだったので、ちょっと兄とアビゲイルのべたついた話を書きたいなと思って書いた。後悔はして……ちょっとしている。

category: 雑記 雑文

thread: ワールドネバーランドシリーズ - janre: ゲーム

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